研究概要 |
昨年度にひき続き, 今年度は更に, 配当政策の決定における企業内外のエージェンシー問題の影響について, 資本構成の場合と同様に広い意味での企業組織を形成する種々のメンバーとそれらの間の影響関係について考察し, その全体としてのシステムを記述する, すなわちそれらの相互関係を実際のデータを使って統計的に計測することを目標とした. 最終的には本研究は, 次のような構成及び内容から成り立っている. I.エージェンシー理論の基本構造 エージェンシー理論の一般的な体系, その経営学的な意義, 企業における財務的意思決定にまつわるエージェンシー・コスト, エージェンシー・コストを減少させるための手段としての経営政策及び企業組織 II.エージェンシー理論のフレームワークによる資本構成の分析 わが国製造業のうち代表的な5つの産業について, その負債比率の決定要因を検討し, 特にエージェンシー関係の数値化のため新たにくふうを加えた「多角化度指標」, 株主の構成, 金融機関との関係などを表す変数を加えて回帰分析を行った. その結果, とりわけビジネス・リスクや成長性の面で, エージェンシー理論の見地からの考察に合致する計測結果が得られた. III.エージェンシー理論のフレームワークによる配当政策の分析 わが国製造業の代表的な企業をとりあげ, 配当率・配当性向などの規定要因を, 重回帰分析により分析した. その結果, 株式の所有構造が広く分散しているほど, 配当の支出が多く行われていること, 負債比率やビジネス・リスクの説明力の強さが確認された. 最後に, 国際比較は時間的理由から, とりまとめることができなかったため, 今後更に研究を重ねることとした.
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