研究概要 |
全国における山間農業地域整備事業および農地開発事業の変遷および現状を, 文献・資料の整理によって究明した. それをふまえて, 西日本の6ヵ所の地域を選び, 集落レベルでの実体調査を行なった. 調査対象とした地域は奈良県月ヶ瀬村, 同桜井市笠地区, 和歌山県南部町・南部川村, 愛媛県久万町, 同大洲市, 大分県朝地町であり, 研究分担者がそれぞれの役割分担に応じて, 資料収集と聴き取り調査を行なった. この実態調査を通じて, 各々の研究分担者は, 農地開発・農産物加工・観光開発という地域資源利用のあり方を示すとともに, 資源利用の主体となる組織の形成を明らかにした. 山間農業地域では各種の事業が計画的に実施されているが, 自然条件の厳しさ, 立地条件の悪さ, 人工密度の低さなどによって, 全般的に地域資源の有効利用がなされていない状態にある. これは, 産業社会の発展によって, 都市に物質, 労働, 資金, 情報などが集中し, 農林業的地域の相対的衰退がもたらされた結果である. しかし, 経済社会の発達は, その反作用をも生み出して, 農山村における自然的価値にも照明が当たるようになっている. 山間農業地域の活性化は, そのような動きを積極的に地域資源の利用開発へと向けることによって, 可能であることを, 調査によって明らかにした. さらに, 集落レベルでの調査によって明らかとなったことは, 如何に資源的に恵まれている地域であっても, その資源を活かして地域社会の活性化に結びつけていく力がなければ, 少しの進歩もないということであった. その意味では, 農村の社会組織が重要な役割を果たしていることが明らかとなった. つまり, 地域発展の方策が探られる場合, 農民の形成した社会組織が, 如何にその主導的役割を果たしていくのかが重要な点となるということであった.
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