研究概要 |
研究対象地域は, 主に滋賀県の湖東平野および安曇川下流域平野, 京都府亀岡盆地, 大阪平野南部, 濃尾平野, 讃岐平野, 関東平野, であった. 研究の方法は, (1)主に1万分ノ1空中写真に写された条里地割1町方格遺構をトレースし, 阡線・陥線が同一プランに乗らないもの, 方位を異にする部分などを, 分布の公狭にかかわらずすべて識別し, 地形(立地条件)とのかかわりにおいて条理施工単元をとらえる一般手法を確立すること, (2)主に5000分ノ1, 2500分ノ1の大縮尺図上で, 条理地割1町方格遺構=「坪」区画遺構をトレースし, 各「坪」の辺長計測データをパソコンに入力し, 立体地図作成プログラムを改良しながら, 「坪」辺長の数値を「高さ」として表現する一種のブロックダイアグラムを多数作成し, そのパターンを読むこと. (3)近世絵図に描かれた条理1町方格遺構を分析すること, などであった. 上記方法の(1), (3)は伝統的な手法であり, (2)が, 特にわれわれの開発した新しい手法であり, 研究の重点も, この手法で作成したブロックダイアグラムとその基礎となった計測データの, 一般的な活用有効性の検計に向けられた. 結果は, 例えば(1)106.5m〜111.5mの標準「坪」辺長は, おおむね40%前後で, 辺長頻度分布はバラツキが大きいと一般的に伝える. (2)南北方向の坪辺長に比し, 東西方向の坪辺長が長いものが多いといった種類の一般傾向の存在を把握しやすい. (3)一定の広さごとにパターンの違いを見せるケースが多く, 郡界線とのかかわりや, 郷ないしそれ以下の条理施工単元の存在を窺い知らせてくれることが稀でない, など, 単に条理研究にとどまらず, 今後の歴史地理研究一般の新しい展開を促す数多くの情報の発信源となるものとして, われわれの開発したブロックダイアグラムは有効なものと判断できるようになった.
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