研究分担者 |
井上 昭彦 北海道大学, 理学部, 助手 (50168431)
新井 朝雄 北海道大学, 理学部, 講師 (80134807)
三苫 至 北海道大学, 理学部, 助教授 (40112289)
上見 練太郎 北海道大学, 理学部, 教授 (10000845)
越 昭三 北海道大学, 理学部, 教授 (40032792)
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研究概要 |
(1)T-正値性を持つ正規定常過程の時間発展は, 第1と第2-KMO-ランジュヴァン方程式によって支配され, 夫々の方程式に基づいて, 一般化された揺動散逸定理と久保の揺動散逸定理が示された. 第1の方程式の中の揺動力は白色ノイズで, 第2のそれは久保ノイズである. 特に, 古典的なマルコフ性を持つブラウン運動に対して発見されたアインシュタインの関係式は, 一般の第2KMO-ランジュヴァン方程式に対して成立するが, 第1KMOランジュヴァン方程式に対しては"ずれ"が生ずる. 現実の非マルコフ的ブラウン運動はT-正値性を持つが, 物理側での実験によって「アインシュタインの関係式に対して"ずれ"が生ずるのかどうか」と問題を提起した. 実際の実験観測がとびとびに行われることを考慮して, 離散時間のT-正値性を持つ正規定常列にして, 上記に対応するKMO-ランジュヴァン方程式の理論を構成し, 第1・第2どのKMO-ランジュヴァン方程式に対しても, アインシュタインの関係式はずれることが示された. ずれが生じないノイズが物理的であるという今迄の基準はくずれるので, 単位時間当りのエントロピーレートと大偏差原理にあらわれるエントロピーレートを, 白色ノイズと久保ノイズに対して計算した. その結果, 第1の方程式に基づくアインシュタインの関係式のずれと第2の方程式に基づくそれとの比rが1より小さいときは, 白色ノイズの方が久保ノイズより情報理論的にはもとの定常列の揺動力として適当であることが分かった. rが1より大きいときは, 具体的例を通して, 複雑な様相を示すことが分かった. (2)自己回帰移動平均過程に対しても, KMO-ランジュヴァン方程式の理論が構成されたが, T-正値性のときの研究(1)と異なり, 久保ノイズのエントロピーレートに関する普遍的性質がみつかり, 今後のエントロピー解析を追求する必要が生じた.
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