研究概要 |
恒星大気の動的構造を明らかにするためには, 恒星スペクトル中の線プロフィールを高い精度で観測する必要があり, このためには(1)高S/N比, (2)高分解能, (3)高品質の分光観測が要求される. 上記(1)の目的にはCCDがすぐれていることが知られているが, 従来のCCDではその画素サイズが大きいため(2)の目的には不適格であった. 本研究では画素サイズの小さい高解像CCDについて調査検討を行った結果, RCA006型が現在では最適との結論に達し, 61年度にはこの高解像CCDを用いた冷却デュワー付検出装置(ドライブ回路を含む)の製作をアメリカのPSI社に発注した. 本装置は62年3月に納入されその後各種テストを行った. その結果, 本装置の読み出し雑音は50電子程度であり, 又, 本装置に採用したRCA006型CCD素子は, 1024×640の画素より成るが, この内いわゆるbad columnとして問題があるのは端の方の一行のみであることが明らかとなった. 又, 本CCDの分解能はほぼ期待通りであることか確かめられた. 62年度には本CCDを岡山天体物理観測所188センチ反射鏡のクーヂ焦点に設置し試験観測を行った. その結果, 本CCDは特に近赤外領域にすぐれた感度を持ち, このスペクトル領域については分解能, S/N比ともに期待通りの観測に成功した. 特に複雑なスペクトルを示す低温度星についても個々のスペクトル線を明確に分離することが確かめられ, 線プロフィール, 視線速度の高精度の測定が可能となった. 又, これら観測データの整約プログラムの開発も並行して行いほぼ完成した. これらにより, 恒星大気の動的構造の研究を今後高精度分光観測に基づきより明確な観測的基盤の上に行う見通しが得られた.
|