研究概要 |
量子色力学は強相互作用を記述する最終的理論であると一般に信ぜられて居るが基正当化は未だ爲して居ない. 此の強い相互作用故に従来其の計算方法である摂動的取扱を不可能ならしめる故であるが, K, ウイルソンにより提唱されたる格子切断の方法は此困難を原理的に除去し非摂動的取扱を許容する. 但現在此迄の研究結果に鑑み数値的模擬実験以外に信頼する結果を導く迄に知れていない. また何ら近似を用いず, 数値計算を行うには膨大なる計算力を要し従来実用に耐えうる精度にて此を行うことは困難と目されて居るが申請者等の開発したる標準量子化を使った方法に拠り問題に見通しをつける事が出来たる故に1986-1987年に亘り我々が使用可能とせし計算能力の範囲に於て大規模なる計算を遂行した. 其結果得た主要成果は巳下通である. (1)ランジュヴアン法は量子色学の何処近似を用いない第一原理的計算を実用規模で行うことを可能とし, 此法に付随したる系統誤差の除去が可能である. (2)本法を量子色力学, 有限温度での振舞, 解析に摘要する事に拠り, クオークを存せぬ理論に於て既に知れたる一次相転移は, クオークの自由度に依りて減衰する事, 併し, クオークの質量が減じ自由度の効果が強くなる場合には, 一次相転移が再び回復することを示した. (3)クオーク場のグルーオン場への反作用は格子切断理論に於て強粒子質量に大きな効果を示すが, 他は内部径数の再規格化として畧繰込むことが出来た. 強粒子質量の物理的結果には大きな実質的変更なしに, 従来のクオーク場の反作用の近似の下で計算されて到達されたる, 分光学的結論が基礎づけられた事.
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