研究概要 |
太陽ニュートリノを測定しようという試みは, 20年も前から行なわれている. ところが実験結果は, 太陽の標準模型から予測される値の1/3しかない. これが「太陽ニュートリノの謎」で, ニュートリノの質量の問題と関係があるのではないかとされている. しかしながら, 問題を解明するためには, 最大420KeVのエネルギーしか持たない水素原子核同士の融合反応からのニュートリノを観測する必要がある. 我々は, しきい値が低くしかもエネルギースペクトラムが測れるインジウムを用いたニュートリノ検出器の基礎研究を行なった. この検出器は低エネルギーニュートリノ一般の測定に使える可能性がある. 特に原子番号の高いものに注目して, InP半導体検出器と, インジウムを基にした. 無機シンチレータの研究を行なった. InP半導体検出器としては, ニュートリノ検出器として必要な100KeVよりも低い60KeVのガンマ線まで測定することが可能なものの開発に成功した. 容量の測定, 荷電欠損領域の評価, そしてアルファ粒子, ガンマ線に対する, 応答を調べた. InPが放射線計測器として動いたのは, 今回が世界で初めてである. 分解能として0.17/√<E(MeV)>が得られた. 分解能はまだ十分に良いとはいえないが, 今後, 純度の向上, エピタキシャル層の厚みの増加, などにより改善が期待される. 今回作られた測定器の大きさは小さいが, これも今後純度の向上, 結晶成長法の研究などで大きいものができてゆくものと期待される. 今後の発展と共に, InPがニュートリノ検出器となりうる可能性があることを示すことができた. 無機シンチレータでは, 何種類かの試料にたいして, 発光その他を調べた. 室温で十分発光量があり, しかも透明度が有る物は得ることができなかった. 今後の期待として, 液体窒素温度にまで行けば, InIやTlI(In)のようなものが使える可能性があることが明らかになった.
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