研究概要 |
中性子散乱用稀釈冷凍器が運転再開後すぐに混合液溜部分に漏れが生じ,冷却不能となった. OXFORD社に修理を依頼するかたわら,温度検出部の改良及び原子炉修服の為東海村での実験が不能になったので,高エネルギー物理学研究所ブースター利用施設における中性子散乱実験準備を行った. 夏休み前に修理を終えたユニットを装着し中性子散乱実験を試みたが,冷却が殆度出来ない事が判明し, 結局英国に送り返して徹底的な改造を依頼し,12月に到着,続いて1月に東北大学にて組立て冷却実験を行ない一応無負荷で5mK迄冷却する事が出来たので引き渡しが完了した. このように稀釈冷凍器の運転は思わぬ事態となり殆度この装置による研究は推行出来なかった. 一方CeCu_6単結晶による中性子散乱研究は日米協力事業によってブルックヘブン国立研究所に於て極低温における非弾性散乱実験を推行し,前年度に続いてb^*C^*面内における帯確率を測定することに成功した. 又LaCu.ナ_<6.ニ>とCeCu.ナ_<6.ニ>の結晶構造を〓度良く測定し相転移の機構を追求すると共に,この転移温度と結晶の単位体種との相関を発見した. この事は伝導電子〓度が相転移を決める有力なパラメーターであることを物語っている. 次にCeCU_6に重い電子の様相を知る為に,Ce_<0.5>La_<0.5>Cu_6,Ce_<0.9>La_<0.1>Cu_6の帯確率の測定を始める目的で単結晶を作製し, 現在中性子散乱実験再開を待機している. この間に高温超伝導の発見という大事件に遭遇した. スピンの強い相関と伝導機構が強くからみ合っているという点では近藤格子の問題と〓接に結びついていると考え, 我々もこの新しい物質のスピン相関を中性子散乱によって研究を行なった. 現在迄S=1/2,2次元反強磁性スピン量子液体という全く新しい概念をみいだすことが出来たが,超伝導機構の発現にスピン相関がどのようにかかわっているかは解明できてはいない. しかし両者は強く相関していることははっきりした.
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