研究概要 |
磁気的なフラストレーションを伴う物質として, 二次元三角格子反強磁性体NaTiO_2, LiNiO_2および二次元強磁性-反強磁性競合系K_2C_<UX>M_<n1-x>F_4とK_2C_<ux>Co_<1-x>F_4とをえらび, 研究を行った. NaTiO_2はスピンS=1/2のハイゼンベルグ型LiNiO_2はS=1/2のイジング型交換相互作用を持っているので, どちらも量子効果が期待される. 一方K_2Cu_xM_<n1-x>F_4およびK_2Cu_xCo_<1-x>F_4では交換相互作用の競合によりやはりフラストレーションが期待される. まずNaTiO_2およびLiNiO_2に対する電子スピン共鳴の実験では従来の四角格子反強磁性体には見られないような現象と確認した. NaTiO_2では低温で信号強度が消え, 三重状態から一重状態へおちついていくことがわかった. LiNiO_2ではにつの相転移点があらわれ, スピンの部分的秩序化が生じることを発見した. 一方K_2Cu_xM_<n1-x>F_4およびK_2Cu_xCo_<1-x>F_4では強磁性相を示す試料で、〓面内でのスピン秩序状態を明らかにした。容易軸が〔110〕方向になり、吸収線幅の温度変化に全く新しい現象を発見した。即ち、相転移点以下の温度領域で温度低下とともに線幅が増大する。この点に関する理論的解釈は興味をあつめ、今後さらに追求しなければならない。この強磁性-反強磁性競合系の帯磁率測定からCu2+濃度の変化とともに強磁性相、スピングラス相、反強磁性相が出現することも確認した。 今後これらの物質に対して, 光散乱, 中性子回析その他の実験により, さらにフラストレーション効果について研究していく予定である.
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