研究概要 |
良質の単相準結晶合金を探索, 作成し, その物性を測定して準結晶相固有の性質を解明するのが主研究の目的である. 1.良質準結晶の作成 (1) Al-Mn系 : まず, Al-Mn2元系で単相準結晶が得られる組成範囲を明らかにし, 次にAl-Mn-Si3元系でより良質の準結晶が得られる条件を明らかにした. さらに, Mnの一部を他の4種の遷移金属に置換することにより, より一層の質の向上をはかった. その結果, Al-Mn-Ru-Si4元系のある組成範囲で, X線半値巾が極めてせまく, 電子顕微鏡観察でも欠陥が少なく, 600℃以上の高温まで安定に存在しうる準結晶が得られた. 多元系にすることによって良質の準結晶が得られるのは, 本来準結晶構造には原子サイトの種類が多いことに関係していると解釈される. (2) Mg-Al-Zn系 : 磁性元素を含まない系としてこの3元合金について単相の準結晶が得られる組成範囲を明らかにした. (3) Al-Li-Ca系 : 安定相として準結晶が得られる合金系の一つとしてAl-Li-Cu合金について析出法により単純結晶の作成を試み, 数mmのグレインの準結晶を得ることに成功した. 2.物性測定 得られた単相準結晶について, 電気抵抗, 帯磁率などの測定を行なった. Al-Mn系の準結晶の電気抵抗は1mΩcmのオーダーの大きな値をもち, 負の温度系数を示した. 特に50K以下の低温で急激に抵抗上昇が生じるという異常が一般的に見られた. その異常が, Mnの局在磁気モーメントと関係し, 準結晶の安定性とも関連が見られた. 磁気抵抗の測定結果などから, この特異性が構造の準周期性に基づく特異な電子状態に基因するとの解釈を行なった. 遷移金属を含まない系に関する系統的実験は未完了である.
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