研究概要 |
最近, Ce, Vを含む化合物の中に, 低温における電子比熱係数γが通常金属の千倍近くの大きな値をもつものが多く見つけられ注目を集めている. 高γは高有効質量と高状態密度を意味する. 我々はこの点に着目し, 主として電子系のスピンダイナミクス及び磁性を調べ, 高γ機構の解明を目指す. 本研究は4部から成り第1部はコヒーレシト近藤状態が極低温, 特に1K以下に現れることが多いことを考慮し, 1K以下極低温域でのESR装置の開発を行った. 現在のところ, 200mK前後の温度まで約10^<13>スピン数台の感度でESR測定が可能となった. 更に高感度化に向けて検討中である. 第2部は重いフェルミ粒子系化合物CeSn_3, CeCu_6中に極微量ドープしたGd^<3+>イオンの電子スピン共鳴の実験を行った. ESR線中は温度に直線的に比例し, その温度依存係数はこれら高γ値から期待されるような大きな値を示さず, 通常のnoble metal中での局在スピンESRで観測されている値と同程度であることがわかった. これは, 実際の意味でのフェルミ面におけるバンド分極が大きくないことを意味しており. 高γ値を与へるモデルを描く上において重要なヒントを与へるものと考えられる. 第3部はV_6Ni, VSn_3の磁性研究から成る. V_6Niの帯磁率は温度に依存しない大きな一定値(2.7×10^<-3>emu/mole)をもち, バンド的であることを示す. 一方, VSn_3は20K以上でキュリーワイス則に従い局在性を示すがそれより低温で一定となる. XPSの4fスペクトルはV^<4+>の特性を示す. 第4部はCe_XLa_<1-X>Mo_6S_8の磁性と超伝導の関連に関する研究である. 超伝導転移温度,上部臨界磁場のCe濃度依存性を測定したが, 結果はCeの4f電子と超伝導電子系との相関をMatsuura-Ichinose-Nagaoka理論を用いてうまく説明できることがわかった. 更に, CeMo_6S_<SR>は重い電子系化合物として特性評価されることがわかった.
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