研究概要 |
われわれは0.1K以下の低温を含む広い温度領域において熱的計測を中心に主としてCe化合物にみられる重いフェルミオンの振舞を研究してきた. まず技術的には, クライオスタットを整備し, 0.02K〜80Kの広い範囲の濃度を実現し, 6Tまでの磁場中で比熱の測定を可能にした. 同時にこの温度領域での電気抵抗の測定も行うことができるようになった. 輸送現象においては電気抵抗の他に液体ヘリウム温度以上の広い温度範囲で熱電能の測定も可能になり, 実験手段は大いに充実した. いわゆる希薄近藤系から高濃度近藤系への移行を調べるため, Ce_xLa_<1-x>Cu_6のセリウム濃度Xを0から1まで変化させた試料について比熱の測定を行った. その結果2K以上ではCeあたりの磁気比熱はXによらずほぼ一定で, 高濃度系では結晶場の効果が多少巾をもつことが認められたにすぎない. 1K以下の比熱の振舞は, 近藤温度Tkを濃度により変化することを考慮すれば, ほぼ同じ振舞とみなしてよい. しかし磁場中で測定した比熱を詳細に解析してみると, 低濃度系から高濃度系への移りかわり, すなわちコヒーレンスの効果と関連のあると考えられる異常がみつかった. 一方, 重いフェルミオンの振舞を示す新しい物質の探索の結果, Ce P d In, Ce Pt In, Ce Ni Inなどの一連の物質が見つかった. その振舞の全容も, 主として電気抵抗, 磁化率, 比熱の測定を通してほぼ明らかにすることができた. その他Ca(Ag, In), (Ce, La)Ni, Ce(Sn, In)_3等の輸送現象も熱電能の測定を中心に進められ, Ce化合物の性質の多様性と類似性を明確に示すことができた. なおウラン化合物に関しては, 文献調査にとどまり, 試料の作成は現在準備段階である.
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