研究概要 |
フォトンエコーはスピンエコーの類似現象であり. 光遷移準位間の位相緩和時間T_2を測定する有力な方法として知られている. 固体や液体など, 凝縮形のT_2は一般的に極めて短く, 極低温においてもピコ秒或いはそれ以下のものが多い. その様な短いT2を, フォトンエコーによって測定するためには強力なピコ秒或いはフェムト秒領域の超短光パルスが必要である. しかしその様なパルスを得るためには, 大規模なレーザー装置と高度の技術を必要とする上, 広い範囲に亘る波長可変性を得ることが極めて困難である. この様な状況を打破するものとしてインコヒーレント光を用いる方法が提案され, その後実験的にも理論的にもその有用性が実証されるに至っている. インコヒーレント光を用いたフォトンエコーでは容易にフェムト秒領域の時間分解能が得られるが, 我々はこの方法をポリビニルアルコール中のクレジルバイオレットに適用した. この試料ではエコー減衰曲線に極めて速く減衰する部分と遅く減衰する部分の二重構造がみられた. これはその光遷移にゼロフォノン線とフォノンサイドハンドの二重の遷移があることに由来している. 即ちこの種の物質は従来フォトンエコーの解析に用いられていた単純な二準位原子系とみなすことができず, フォノン系をも含む多準位原子系とみる必要があることを示している. 我々は多準位原子系モデルをフォトンエコーに適用し, エコー減衰曲線とバーシステントホールバーニングが共に矛盾なく説明できることを明らかにした.
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