研究概要 |
熱平衡状態にある電磁抵抗が1/fゆらぎを示すことは長いこと分かっていたが, その発生機構については未だに明かでない. いろいろな実験事実から判断すると, 1/fゆらぎは電荷とフォノンとの衝突確率のゆらぎに帰着されると考えるのが最も妥当である. このアイデアを実証するために二種の実験を行った. 誘電体の誘電損失は分極とフォノンとの相互作用によるので, 誘電率の虚数部のゆらぎが1/fスペクトルを持つはずである. 強誘電体のTriglycinesulfateおよびロッシェル塩の結晶を用い, これらのキュリー点付近で温度を安定に保って実験を行ったところ, 予想通りの結果を得た. さらに強磁性体のガドリニウムを用いて磁性損失がやはり1/fゆらぎをすることを実験的に確認した. この結果は論文として近々発表される. さらに直接的なフォノンモデルの確認をするために, 上記の強誘電体及び水晶の単結晶を用いてブリルアン散乱光ゆらぎの計測を光子計数方を用いて行った. 実験を通じて二つの困難にであった. その一つは光源の安定度である. 光源にはアルゴン・イオン・レーザを用いているが, 強度は十分に安定化してあるが周波数ゆらぎは安定化していない. その二は, 光子計数法で得られるパルスは入射光に比例する確率を持ったポアッソン過程で, 入射光の強度がゆらいでいるときにはパルス列は複合ポアッソン過程になる. これからの入射光の強度をどのようにして推定するかという問題である. これは数学的に解決され論文として発表した. レーザの周波数ゆらぎは前方散乱を測定する際に非散乱光とのヘテロダイン検波を行うことで解決される見通しがついたので, 現在実験を行っているところである. 要約すると, 2年間の実験を通じて初めの見通しがかなり確実なものになり, 最後のつめがかなり限定されてきた.
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