研究概要 |
本年度の研究目標は, 昨年度調べた核・マントル分離素過程をもとにして原始地球成長とともに地球金属核がいかに成長するか数値シュミレートすること, 金属核形成後の地球熱史を明らかにすること, 原始大気の散逸過程を明らかにすること, であった. まず, 原始地球の成長過程が再検討され, 太陽重力を考慮した微惑星衝突確率, 散乱確率が計算された. その結果, これまで無批判に用いていた二体衝突断面積よりも, 3〜5倍大きい衝突確率が得られること, この衝突確率は"暴走成長"を引き起こす性質をもっていること, また, 散乱過程の見直しによって, 微惑星のランダムな速度は等方的ではなく, 太陽回転軸方向では極めて小さな速度しか与えないこと, などが明らかにされた. これら新たな知見をもりこんだ原始地球成長過程のシュミレーション, 及びそれにともなう金属核成長過程のシュミレーションは現在続行中である. 原始地球をとりまく原始大気の構造と,大気散逸にともなす希ガス成分の動力学的質量分別過程が調べられ, 希ガス中最も重いXeは今日地球大気にみられる程度の十分な質量分別(重い同位体が軽いものにくらべ多く存在)が起こること, 他の希ガスも質量分別を起こすものの, 地球内部からの脱ガス成分との混合でその効果は顕在化しないことが明らかにされ, これまで謎であったXe問題に1つの解決方向を与えた. 金属核形成後の地球熱史の研究は, 本年度までの段階では十分な結果を出すに至っていない. それ以前の種々の過程の見直し作業を先行させたためで, 今後引きつづきこの問題を調べ, あらたな熱史の結果を得たいと考えている.
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