研究概要 |
1.地表面粗度群落の種類と密度のいろいろな場合について, 熱輸送バルク係数を数値実験によって求めた. 運動量輸送のバルク係数C_Mと熱輸送のバルク係数C_Hは共に無次元群落密度によって変化, ある密度で極大値をとる. C_MはいつもC_Hより大きな値をとる. C_Hが極大値になる群落密度はCMの極大値になる群落密度より大きい. これらの結果は野外観測結果と矛盾していない. 2.V字形の谷の中を流れる夜間冷気流の三次元的な風速と気温の分布を観測した. 尾根の風速が2.6m/s以下の時, 冷気層内に典型的な冷気流が発生する. そのような冷気流の79の観測例を中心に解析した. 谷内冷気層は二層に分かれる. 最大風速の高さより下では風速は吹送距離によってあまり変わらないが, 上部では吹送距離が大きくなると風速が増す. 最大風速は冷気の強さの平方根に比例する. 3.都市や田園集落のような非一様地表面の空気力学的粗度をロスビー数相似則を応用し, アメダスデータを解析して得ることができた. その結果, 空気力学的粗度は粗度をつくる地表面の平均的な大きさに比例することが分った. これを日本全土に応用するには, 国土地理院の土地利用データを利用すれば各地の空気力学的粗度を知ることができる. 4.パーセルの概念を導入し, 斜面冷気流の代表的厚さと流速の定式化を行うことができた. これら代表量は斜面の落差と冷気流の強さと斜面の空気力学的性質と一般場の大気安定度に依存する. 多くの観測結果はこのパーセルモデルで整理することができた. 5.積雪面の抵抗係数と熱交換バルク係数を実験的に決定した. 抵抗係数は摩擦速度と雪面の幾何学的粗度の関数であることが分かった. 熱交換バルク係数の幾何学粗度依存性は小さい.
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