研究概要 |
本研究はモンスーン循環の力学的特性を流体力学的なモデルによって調べることを目的とする. 実際の大気中では, モンスーン循環は南北の温度差によって生じる大気循環と重なっているために, その素過程を調べることがむずかしい. 本研究では, モンスーン循環に本質的であると考える力学因子を取り出して, それによって生じる循環の性質を理論及び室内実験によって調べた. すなわち, 安定な密度成層流体中に, 局所的な冷熱源によって, 地球の自転の影響を受けながら, どのような循環系が形成されるか, という問題である. 理論の結果:理論においては, 現象の水平スケールがどのような力学素過程によって決定されるか, という問題を考察した. この現象は, 1)地表面にある冷・熱源からの鉛直方向の熱の拡散, 2)水平の温度差によって励起される定常的な水平対流, 3)慣性・内部重力波の3つの力学素過程が組み合わされている. 線形理論の結果によれば, 循環系の水平スケールλはλ=Nκ1/2ω3/2F(f/ω)で与えられる. ただし, Nは浮力振動数, κは鉛直方向の渦拡散系数, ωは地表面温度の変化する角振動数, fはコリオリパラメータである. 実験の結果:実験においては, 直径80cm, 高さ3cm水槽の中央部の直径20cmの円形領域を冷却域とし, その外側は断熱条件の境界を設定して, 水槽内に生じる流れの性質を温度と速度の測定を行って調べた. 主な結果は次のようにまとめられている. 容器の回転が0.5RPM以下の時は, 循環は軸対称で, 地表面近くに前線は形成されない. 容器の中心付近を冷却すると, 薄い寒気層を除いて, すべて低気圧的の回転になる. 0.5RPM以上の回転では, 循環は非軸対称になり, 前線の形成が生じる. その振舞いは実際に観測される寒冷前線の動きとよく似ている.
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