研究概要 |
今年度の係留流速観測は犬吠崎沖の2点と伊豆小笠原海溝の中心軸で行なった. 後者は北偉33度55分,東経141度55分,水深9205m地点の底上20m,820m,1620mの3層で行なったが,スペクトル解析の上で半日潮,慣性振動,1日潮の3つの周波数帯に顕著なエネルギーピークを有し,調和分解により3者を分離し,主要な潮汐成分を分離することができた. 顕著なことは一日潮の潮流は南北成分が東西成分に比して大きく,潮汐波が南から北へ伝播することを示した. これに対して半日潮は流速の東西成分,南北成分ともほぼ同じ大きさで,潮汐波は北東から南西へ伝播していることになる. 調和分解による分潮の振巾は海面の上下変動から予想される1cm/S以下である. 一方,犬吠崎沖の記録から評価した潮流は多くの観測のそれと同じく潮流は不規であった. 伊豆海嶺上の八丈島西方60〜80kmの測点で得られた流速,インバーテッドエコーサウンダ,海底圧力計の記録の解析を行なった. 海底圧力には八丈島の潮位と同じ大きさの圧力変動が記録された. ところが,流速・IES記録は共に潮汐成分の振巾と位相に時間変動があること,特に潮位から推定される2.6cm/secに比べて3倍の大きさの潮流が観測されていて,内部潮汐が重要であることを示した. そして,卓越する潮流成分の振巾の鉛直成分は海洋の密度構造によって決まるので黒潮の流軸との相関がみられ,IES記録とも矛盾がない. 本研究の目的である海山域の振巾増巾は内部潮汐によることが,海溝を含む広域の観測によって解明することができた. モデルによる研究は数値計算によって内部潮汐の励起機構の解明を行なった. 海溝域まで含むモデル計算は現在進行中である.
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