研究概要 |
川井地域および釜石地域の"早池峰構造帯"の層序・地質構造および塩基性〜超塩基性岩類の岩石学的特徴に関する地質学的・岩石学的最検討を行った. その結果は以下の通りである. 1."早池峰構造帯"の最下位層をなす塩基性〜超塩基性岩類を早池峰複合岩類として一括した. 川井地域の"早池峰構造帯"〜南部北上山地北緑部の古生界は, 下位より, オルドビス系〜シルル系?早池峰複合岩類(中岳蛇紋岩, 神楽複合岩類および小黒層), オルドビス系?〜シルル系薬師川層およびシルル系小田越層に区分される. いずれも整合関係にある. 釜石地域の"早池峰構造帯"中の古生界は, 下位より, シルル系?早池峰複合岩類(東部では犬頭山複合岩類, 西部では岩倉山複合岩類), デボン系千丈ケ滝層(下位の大沢川部層と上位の砂子畑部層とに細区分), 石炭系小川層およびベルム系栗林層に区分される. 早池峰複合岩類と千丈ケ滝層とは断層関係, 他はいずれも不整合関係にある. 2."早池峰構造帯"の地質構造は, "構造帯"東縁部では東フェルゲンツ, 西縁部〜南部北上山地東縁部では西フェルゲンツである. "構造帯"はその両翼に逆断層をともない, 早池峰複合岩類を核とする一大背斜構造を呈する. 3.早池峰複合岩類中の塩基性岩類の化学組成は海嶺玄武岩のそれに類似し, 混在するトロニエム岩の化学組成も海洋地域のそれに類似する. 4.早池峰複合岩類は, オルドビス紀ないしシルル紀に海洋性地殻として形成され, この上にシルル紀の陸源砕屑物が堆積した. "早池峰構造帯"はシルル紀以降大陸地域と海洋地域の漸移帯に位置していたが, ジュラ紀後期に上記の背斜構造が形成されたことにより, "構造帯"として他の地域と区別されるようになった.
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