研究概要 |
昭和61, 62両年度に流体包有物研究用の顕微鏡用冷却・加熱装置(リンカム社-TH-600RMS)を設置し, その試料作製方法について改良を加えたのち, いくつかの鉱床産および変成岩の鉱物中の流体包有物の均質化温度を測定し, 考察を加えた. 1. 研磨薄片の製作法を改良し, そのトリミングのために簡単な器具を考察した. 2. 青森県温川鉱山の黒鉱鉱床には2種の金に富む珪鉱が存在する. その一つは層状で黒鉱と接し, 他の一つは黒鉱からやや離れてパイプ状をなしている. この両者が流体包有物の均質化温度で区別できるかを検討した. 後者は265-270°Cによい集中を示し, 前者はそれより巾広い分布を持つが, 10°C程度高温であった. 流体包有物についての従来の研究からみて, これだけから両者を区別するのは困難であろう. 3. 北海道東部常呂変成岩はA-Eの5帯に分けられている. A帯以外は鉱物組合せと鉱物の化学組成からその温度・圧力条件の推定が可能であり, A帯はそれらより低温・低圧と推定されている. A帯に産するプレーナイト中の流体包有物の均質化温度は100°C前後で, 圧力補正を考慮すると200-250°C(圧力1-2kbを想定)となり, B帯の低温・低圧側を示した. 合成実験の困難な低温の変成岩については, とくに低圧タイプの変成岩では流体包有物の研究が有効であろう. 4. 青森県恐山の噴気帯には石英脈の一部と思われる岩片も見いだされる. その中の石英中の流体包有物の均質化温度を測定した. 210-219°Cに大きな集中が, 250°Cにつぎの集中が見られた. 流体包有物の形態も考え合わせて, 250°C付近で生成した石英中に, その後のやや低温の熱水作用が記録されていると解釈される.
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