研究概要 |
フルカラーエレクトロルミネッセンス(EL)パネル実現のためには, 3原色(赤緑青)発光を得ることが必要不可欠である. 本研究では, 新しいカラー薄膜EL材料の可能性としてCaS, SrSをとりあげ, 薄膜成長法の確立と薄膜EL素子の多色化について検討した. 得られた知見を以下に記す. 1.CaS, SrS薄膜を電子線蒸着法により作製した. 蒸着時の基板温度を400〜600°Cにあげることにより膜の結晶性は改善された. また, イオウの共蒸着を行うことにより化学量論的組成比からのずれも小さくなった. 2.二重絶縁構造を有するCaS:Eu(赤色発光), CaS:Ce(緑色発光), SrS:Ce, K(青色発光)薄膜EL素子を作製し, 3原色のELを得ることに成功した. 発光輝度は60Hz駆動のとき, 各々15, 15, 36cd/m^2であった. 3.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子においてメモリー効果を見いだした. これらのEL素子のメモリー効果は, 母体の固有格子欠陥が原因になっているものと考えられる. 4.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子の発光機構を検討するために, パルス励起による波形を測定した. その結果1回の励起期間に3回の発光が観測された. 第1ピークと第3ピークは直接衝突励起に必要なホットエレクトロン生成には低すぎる電圧のもとで観測された. 従って, これらのEL素子の励起機構は次のように考えられる. 電界によってイオン化した発光中心が伝導電子を捕獲後, 内殻電子の励起状態を生じ, その後発光を生じる. 5.フルカラーELパネルを試作し, その特性を評価した. パネルは, SrS:Ce, K薄膜EL素子とCaS:Eu薄膜EL素子の間に短波長および長波長透過フィルターを挿入した構造をもつ. パネルの発光輝度は白色レベルで7.5cd/m^2(60Hz)と低いが, 赤緑青の輝度の比は3:10:2であり, カラーCRTの場合に一致した.
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