研究概要 |
本研究では, 時間域および周波数域における非線形誘電緩和スペクトロメータを開発し, それを用いて高分子機能性材料の非線形誘電緩和現象の研究を行った. その概要は以下の通りである. 1.時間域における非線形誘電緩和スペクトロメータの開発-高速高電圧矩形波電場印加装置, および電気変位検出回路を製作し, これらとディジタル・ストレージ・オシロスコープおよびパーソナル・コンピュータを組合わせることにより, 電気変位応答の立上り時間の電場加速効果を観測する時間域・非線形誘電緩和スペクトロメータを開発した. 2.周波数域における非線形誘電緩和スペクトロメータの開発-シンセサイザ, 高電圧増幅器, ディジタル・ストレージ・オシロスコープおよびパーソナル・コンピュータを組合わせることにより, 正弦波電場入力に対する電気変位応答中に含まれる基本波および各高調波成分の振幅・位相遅れをソフトウェア処理により検出する周波数域・非線形誘電緩和スペクトロメータを開発した. 3.上述のスペクトロメータを用いて, 代表的な機能性高分子であるフッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体(強誘電性・圧電性高分子)の非線形誘電緩和スペクトルおよびポリチオフェン(導電性高分子)の非線形導電率スペクトルの測定を行った. 共重合体の非線形誘電緩和スペクトルを, キュリー点を含む温度域で測定することにより, 強誘電性発現の原因となっている双極子間の局所的な相互作用について新しい重要な知見が得られた. また, ポリチオフェンの非線形導電率スペクトルを, 液体窒素温度から室温に至る広い温度範囲で測定することにより, 導電機構に関する新しい情報が得られた.
|