研究概要 |
CFRP複合材は, 横衝撃力をうけた場合に, 内部に層間剥離を生じ易く強度低下を来たす弱点がしばしば指摘されて来た. この点に鑑み本研究はCFRP積層板が衝撃荷重を厚さ方向に受けた場合の力学的挙動とそれによって生じる損傷につして明らかにしようとしたものである. 最初に, 積層板の積層方向の縦弾性係数に関連し, パレス伝ぱ法及び厚さ方向固有振動数より積層方向弾性波伝ぱ速度を測定し, これより求めた動的縦弾性係数と圧縮試験による静的縦弾性係数の比較を行った. その結果, 厚さ方向縦弾性係数に関して動的と静的の値に顕著な差は認められなかった. 次に, 複合材の動的強度試験法としてホプキンソン棒を用いた動的曲げ試験法の検討を行った結果, 実験上の幾つかの問題点が明らかとなった. 今後これらの点の検討が必要である. 最後に, 〔0/90/45/-45〕sの積層構成をもつCFRP積層板が横衝撃を受けた場合の動的な挙動, すなわちたわみ, ひずみ, 衝撃点に作用する荷重の過渡的な時間履歴を実験及び解析より明らかにし, また板が受ける損傷に関して, 超音波顕微鏡と蛍光浸透探傷法により探傷を行った. その結果, 衝撃持続中の板の巨視的挙動は, 積層板を均質な, 曲げに対しては異方性を有する擬似等方性板として扱った計算により概略表わすことが出来ることが判った. 但し, 損傷の発生による影響としてたわみの局所的集中, ひずみ履歴の乱れ等が測定にはみられた. 内部に発生した各層間の剥離部は超音波法と蛍光浸透探傷法でほゞ一致し超音波顕微鏡による層毎の探傷の可能性が得られた. また層間剥離は隣接する層の繊維方向が直交する層間のみに表われること, 衝撃側と反対側の外層に近い程大きいことなど興味深い知見を得た.
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