研究概要 |
各種の機械, 構造物は近年益々大型化, 高性能化の方向にあり, またそれらが稼動する環境も多用化, 苛酷化の一途をたどっている. それに伴い金属材料には高強度, 耐食性, 耐熱性, またときには軽量性が求められており, 高強度材料と耐食材料が益々脚光を浴びつつある. しかしながら, 高強度材料, 耐食材料は応力腐食割れ(SCC)に敏感であり, SCC条件下で動的応力, とくに実機, 構造物において一般に見られる組合せ・多軸応力の動的SCCき裂発生挙動を明らかにする必要がある. そこで本研究では, 高強度鋼SCM435-3.5%NaCl水溶液の組合せ下において, 曲げ, ねじり, および引張り応力ねじり応力が同位相の引張り・ねじり組合せ応力下の繰返しSCCき裂発生挙動を検討した. τ_<max>≧780MPaのねじり応力下では長手方向に対して直角方向の粒内破壊により破断し, 空中疲労強度からの低下は見られない. また, 500MPa≦τ_<max><780MPaでは, APC型SCCによる長手方向き裂が腐食ピット底より発生した後, その長手方向き裂先端より最大主応力支配の粒界き裂が発生・進展することにより試験片が破断した. ねじりのτmax<500MPaおよび引張り・ねじり組合せ応力下では, 腐食ピット底より直ちに最大主応力あるいは最大垂直変動応力に対して直角方向のき裂が発生・進展して破断に至った. 腐食ピット底より繰返しSCCき裂が発生する力学的条件は, 腐食ピットを鋭いき裂と見なして, 最大垂直変動応力幅を用いて計算した応力拡大係数幅△KIFSCCにより定まった. 同様に, APC型SCCによる長手方向き裂は, 腐食ピット底のモードIII応力拡大係数幅△KIIIが△KIIIFSCCをこえたとき発生した. また, 腐食電位のパワースペクトルを求め, 荷重繰返し速度に相当する周波数のスペクトル成分の経時変化を調べることにより, 繰返しSCCによる最終破断の予知が可能であった.
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