研究概要 |
機械加工に要求される加工精度は最近ますます巌しくなってきているが, 常にミクロンオーダの加工精度を維持することは極めて難しい. その最大の原因は工作機械の熱変形である. 熱変形の最大の原因としては, 主軸モータや軸受などでの発熱, いわゆる内部熱源によるものと周囲温度の変動やふく射などの影響による, いわゆる外部熱源によるものが考えられる. しかし現在のところ, これらの熱源により生じる熱変形挙動は明らかにされておらず, また熱変形の防止方法についても確立されていない. そこで本研究では, 1.小型のNCフライス盤を使い熱変形挙動を調べた結果, 周囲温度の変動や主軸部での発熱により数十ミクロンもの熱変形をおこすことが明らかとなった. 2.工作機械の構造をモデル化したモデル構造物を使い, 内部熱源や外部熱源により生じる熱変形について調べ, 電子冷却素子を使って熱変形を防止する方法について検討した. その結果, (1)熱的に非対称な構造物は周囲温度やふく射の影響を受け, 単純な熱膨張だけではなく, そりや傾きなどの複雑な熱変形挙動を示す. (2)熱変形が内部熱源による場合には, 熱源の周囲に電子冷却素子を取り付けて, 構造物の温度が一定となるように電子冷却素子の吸発熱量を制御すれば熱変形を防止することができる. (3)熱変形が外部熱源による場合でも, 構造物に電子冷却素子を取り付けて, 構造物の温度が一定となるように電子冷却素子の吸発熱量を制御すれば熱変形を防止できることが明らかとなった. 3.内部熱源の発熱量を正弦波状に変動させ, 構造物の温度分布を測定した結果, (1)熱源から離れるにしたがって温度の振幅は指数関数的に減衰し, 位相は遅れる. (2)構造物の任意の位置での温度の振幅や位相を測定することにより, 熱源の位置や発熱量を探査することができることが明らかとなった. 以上のように本研究を行った結果, 熱源を探査し, 熱変形を防止する方法が確立された.
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