研究概要 |
金属結晶表面層に格子欠陥が導入されると, その周囲の結晶は歪み, 電子エネルギ状態が変化する. また, 光が結晶表面に入射すると, 光が電子と相互作用し, 電子が励起され, 基底状態に戻るときに放出される光が反射光となる. したがって, この反射光を調べることによって, 電子のエネルギ状態格子欠陥の分布状態を知ることができる. その結果を加工にフィード・バックすることにより, 目的とする性能を持った部品を超精密切削により得られる. 本研究では, 先ず, 格子欠陥を反射率スペクトル測定により評価するために, 結晶中に格子欠陥が存在するときの電子エネルギ状態を量子力学に基づき解析した. すなわち, 量子力学の計算手法であるRecursion法を用いて欠陥まわりの局所状態密度を計算した. この局所状態密度と, 空孔および転位まわりの応力場の計算から原子間距離の寸暇を求め, この変化による電子のエネルギ状態の変化を計算することで, 反射率スペクトルの格子欠陥依存性で推定した. 次に, 真空紫外から可視光(波長100〜800mm)にわたる広範囲な反射率スペクトルを0.001%オーダの精度で測定が可能な装置を設計, 製作した. そして, 結晶性の異なる金属表面を真空蒸着の基板温度を変えることで作製し, その反射率スペクトルを測定した. 電子線回折像と理論解析結果の二つと比較し, 格子欠陥の分布状態と反射率スペクトルの関係を実験的にも明らかにした. また, イオンスパッタリング面の反射率スペクトルを測定することで, 結晶状態を評価し, 加工法と加工表面層の結晶状態の相関を明らかにした. この結果から, 超精密切削により加工した金属表面の光反射率スペクトルを測定し, それより加工表面層の評価を行い, その情報を次のステップの加工条件にフィード・バックすることにより, 目的とする表面状態を持つ部品を作製することが可能であることを明らかにした.
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