研究概要 |
省エネルギー機器として期待されているヒートポンプにとって, より高温の供給源となりうることが重要である. 本研究では, もはや限界に達したのか感のある単一成分の冷媒ではなく, 向流型熱交換器を用いることにより熱交換器における不可逆損失を低減する事が可能で, 成績係数も向上できるのではないかと期待されている非共沸混合冷媒を適用することを考える. 混合冷媒の熱力学的, 輸送的物性の整理, 伝熱を考慮したヒートポンプサイクルのシミェレーションによる混合冷媒を用いたヒートポンプの性能の評価, 熱交換器の伝熱面積の成績係数に与える影響に注目したヒートポンプ実験装置の運転などを通してヒートポンプの高温化について総合的に研究することを目的として研究を行ない, 以下の知見を得た. (1)非共沸混合冷媒を用いた冷凍機においては, 熱交換器における熱伝達率が単一冷媒のそれより低下することが知られているので, その程度を定量的に評価するために, 凝宿, 蒸発熱伝達率について混合することによる低下機構を簡便な形でモデル化し, それらは実験結果とよく一致することを示した. (2)本実験範囲内では, 物質伝達による伝熱低下は, 凝縮よりも蒸発において顕著であくことが分かった. 伝熱低下のクオリティに対する依存性については, 高クオリティ域の方が低下の程度が大きいことが分かった. (3)R12, R22の単一冷媒, 及びR22-R114系の混合冷媒についてヒートポンプの実験とシミェレーションを行い, サイクルの成績係数が凝縮器及び蒸発器における伝熱特性に大きく依存することが分かった. 混合冷媒の成績係数が単一冷媒のときよりも改善される条件は, 熱源水の温度変化が大きい場合に限られ, それには十分広い伝熱面積が必要となる. また, 計算の範囲で成績係数が最も改善される組成はR22,10%+R114,90%付近であった.
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