研究概要 |
近年, 新素材の開発に伴い, 各分野において熱物性値を精度よく計測することが切望されている. 著者らはかねてより, ステップ加熱法による測定法を研究し試料全表面からの放射熱損失を考慮し, 更に方形波パルス状の加熱により熱拡散率と比熱の同時測定を可能とした. しかし, 1,300K以上の温度領域に関しては, 測定上, 不安定要素があり, この原因の一つとして, 試料表面の放射率の値が正しく知られていないことがあげられる. 試料の表面処理の方法によっては放射率の温度依存性を考慮する必要のある例も報告されている. そこで本研究では, 高温での放射率の値, 温度依存性を明らかにして高温における測定精度の向上を図るための第一ステップとして, 試料表面の放射率についてその測定方法を検討し, 測定を行った. 測定試料の表面塗布薄膜に関して, 1,300K以上の高温でも安定な材質を探究した. 即ち(a)耐熱塗料(Black Pyromark2500), (b)シリコン系合成樹脂, (c)SiC系塗料(ミラーテックスMo), 及び(d)SiC系塗料(ニューセラミックスコート)の4種類について耐熱性について検討した. その結果(d)が1,600K近くまで使用可能であり最も適していることが判明した. 次に黒体炉及び加熱炉の組合せによる放射率測定装置を作製し, 波長0.90μm(773〜1,373K)及び波長の0.65μm(1,173〜1,773K)の標準放射温度計を使用して, 前記4種類の薄膜の放射率を測定した. その結果, 800〜1,600Kの温度範囲で, それぞれの塗布膜の放射率の絶対値とその温度依存性が求められた. 温度依存性は比較的小さいことも求められた. 次に耐熱性の優れた(d)SiC系塗料を採用して, ニッケル及びマグネシヤレンガについて, 熱拡散率及び比熱を1,300Kまで測定した. その結果と従来行ってきたカーボンブラック塗布による同様の測定との比較を行った. その結果, 両者の差が認められ精度の向上が認められた.
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