研究概要 |
本研究は地震時に液体容器に発生する, 液面のスロッシング現象を抑制する方法についてのものである. 直径が数m以上の容器の液体表面の揺動の固有周期は, 地震の分野でやゝ長周期とよばれる2〜10sec内外の領域であり入力振幅はときには半振幅で50cmを超え, 石油貯槽などに大きな被害を及ぼした例も多い. 最近, 大型の高速増殖炉(FBR)を使用した原子力発電所の開発が計画され, その主容器内の液体ナトリュウムのスロッシングの抑制が問題となりつゝある. 直径20mの容器は, 波頭による力学的影響のみならず, 波による温度変化も大きな問題点である. 本研究では, 能動的制御により, スロッシングの発生を抑制することを研究した. 当初, 電気・油圧系を用いて, 原理的可能性を調べる予定であったが, 油圧系の常時運転など実用上問題があるので, 地震時に瞬間的に立上れるリニア・モータを使用することを試みた. 第1年度は, リニア誘導モータを用い, 通常のPID制御に近い制御を, 非線形性の強いリニア誘導モータを用いて実現するため, 小型計算機を用いて実現することを試みた. スロッシングの抑制には成功したが, リニア・モータの電磁反撥力の影響もあり, 加速度特性の改善はできなかった. 第2年度はこの点を改良すると同時に適応制御理論を用いて, 4変数(スロッシング波高, 波速度, 相対変位, 加速度)の改善をはかり, 地震波入力も含め, その目的を達した. また, ローラ支持されている容器が無用のドリフトを生じることを防止するため, 第1年度は機械摩擦を用いたが, 第2年度は特性の安定したリニアパルス・モータを用いて成功した. これらの実験はいずれもシミュレーションで裏付けされているが, 対象系モデルとしては, 1自由度のHousnerモデルで十分であることが明らかとなった. また, 地震波として, 日本海中部地震の秋田における記録の長周期側のピークを, 系の固有周期に合せる手法を開発し成功した.
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