研究概要 |
本研究は, 分子層エピタキシャル法による良絶縁性単結晶サファイア(α-Al_2O_3)薄膜を集積回路素子に応用し, 高性能化を目指すものであり, そのために基礎となる単結晶サファイア薄膜の単分子層毎の成長過程および機構を解明し, その集積回路・素子への適用の方法を明確にすることが目的である. 本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる. 1.本分子層エピタキシャル法は, 原料に塩化アルミニウム(AlCl_3)と酸素・ヘリウム(He+15%O_2)混合ガスを用いて, これらを交互に, 真空中にセットされた高温基板(〜500°C以上)に吹き掛けることで, これらのガス分子の単分子層毎の化学吸着・反応により単結晶サファイア薄膜を単分子層レベル単位でディジタル成長する方法である. 本方法により, 単結晶サファイア(0001)および(11^^-02)面基板上に, 〜600°C以上で単結晶サファイア薄膜を0.09nm単位でホモエピタキシーすることに成功した. この場合のガス導入圧力は〜5×10^<-3>Paである. 2.この単位成長過程を4重極型質量分析計を用いてモニターし, ガス分析を行った結果, AlCl_3は基板上でAlClとなって解離吸着し, この単分子吸着層と酸素との反応によりサファイア薄膜が形成されると推定される. 3.超伝導体ニオブ(Nb)単結晶薄膜上にも, 本方法によるサファイア薄膜の成長が試みられた. その結果, ニオブ単結晶(100)薄膜清浄面上に約500°Cで, サファイア(112^^-0)稠密面が平行に成長することが初めて確認された. さらに, このとき, サファイア薄膜は数A2F2の厚さの成長で, ニオブ表面を被覆しうることがわかった. これらは, 分子層エピタキシャル法による単結晶サファイア薄膜の応用上極めて重要な成果である.
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