研究概要 |
シリコン基板上にエピタキシャル絶縁膜(Al_2O_3系)を形成するための基礎研究として, まず超高真空内での清浄シリコン表面と原料ガスであるトリメチルアルミニウム(TMA)とN_2Oガスの吸着, 反応過程を調べた. 分析はX線光電子分光法を用いており, 反応過程はArFエキシマレーザ励起の有無, 基板温度, ガス導入条件等により大きく依存する. 結論として, 清浄シリコン表面に直接TMAを吸着させ, 昇温(600°C)するとSiCが形成される. これを避けるには数A2F2(コード)〜+A2F2(コード)の酸化膜をシリコン表面に形成した後, TMAを導入すれはよいことが明らかになった. この結果をもとにSi(100), (111)基板を用いて, エピタキシャル成長の方法を検討した. 方法としては次の4種類を試みた. 1.固相成長法, 2.光CVD法, 3.ガスソース分子線エピタキシャル法(MOMBE法), 4.減圧気相成長法である. 結果的には3と4の方法でSi基板上にエピタキシャルのAl_2O_3膜を成長させることに成功した. このような方法でエピタキシャルAl_2O_3/Si構造が形成できたのは世界で初めてであり, 本研究の当初目的が予想以上に達成できた. 4の方法は成長温度が1000°Cであったが, 3の方法では720°Cという低温度でエピタキシャル成長が可能であった. このことは3次元集積回路を考慮した場合, 多層積層構造の形成において大きな利点となる. 成長した絶縁膜を電子線回折法により分析した結果, 結晶構造はγ-Al_2O_3であり, Si(100)上にγ-Al_2O_3(100)が成長していた. この場合の格子不整率は2.4%であり, サファイアであるα-Al_2O_3の場合よりも小さい. またAuger電子分光の結果から, 組成もAl_2O_3の化学量論的組成になっていることが確かめられた. エキシマレーザを用いると, さらに堆積速度は増加することが判明したが, 成長温度にどのように影響を与えるかが, 今後の課題としてあげられる.
|