研究概要 |
高度な音声認識システムを実用化するためには, 大規模な知識ベースを参照しながら, 実時間内で動作し, 高い認識率を得ることが望まれる. 一方では, 音声認識の用途から低コスト化の要求も強い. そのようなシステムを実現するには, 並列処理化とパイプライン化を高度に含むアーキテクチャの効果的な設計と必要に応じたLSI化が不可欠である. 本研究は, このような背景から, 音声認識システムのアーキテクチャの検討とそのためのハードウェア設計支援システムの開発を目標としたものである. 音声認識システムのアーキテクチャとしては, 音声認識処理プロセスの構造化と並列処理を用いたシステムアーキテクチャについて検討した. まず, 効果的な音声認識手法としてベクトル量子化手法の利用を検討し, 特微量の検討とそれを用いた音韻認識実験を行なった. また, 音声認識のためのベクトル量子化アルゴリズムの拡張についても検討した. 次に, 音韻レベルから単語, 構文レベルまで階層的に処理可能な並列処理アーキテクチャを提案し, 実際に, 様々な音声認識手法を効果的に組み合わせて, 認識率の向上と共に高速処理を図ったシステムを通信機能を持つLSI(トランスピュータ)上に実現した. 並列処理を導入することにより, 高速化のみならず, 認識率の向上も図れることを実証した. 音声認識のための設計支援システムとしては, 主に音響処理や特徴抽出部の処理アルゴリズムをLSI化することを目的としたLSIアーキテクチャ設計支援システムを検討した. 本システムは, 主に信号処理を対象としており, 処理アルゴリズムと処理時間やコストに関する制約を入力することにより, LSIのアーキテクチャを設計し, レジスタ・トランスファ・レベルのハードウェア記述を出力するものである. 本研究はLSIアーキテクチャの設計システムの研究として多くの成果をあげつつあり, この分野の先駆けをなしたものといえる.
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