研究概要 |
10μm帯から可視光への高効率パラメトリック映像変換を実現するため以下の基礎的研究を行い成果を得た. 1.3次の非線形感受率を計算した. 非線形媒質としてセシウム蒸気, その2光子共鳴準位として6d^2D_<3/2>, 差周波数光発生の過程を用いるのが有望である. これによりこれまで知られていたナトリウムの和周波数光発生の過程を用いるより数百°C容器の温度を下げられることが判明した. このことは新たな原理に基づく容器の開発を示唆するものでもある. 2.上記の過程における位相整合条件を検討した結果, セシウム蒸気の温度があまり高くない範囲では, バッファガスを導入しなくともコリニアな位相整合が可能である見通しを得た. また視野角の見積りも可能になった. 3.試作されたセシウム蒸気用容器の使用テストを行い, 安全性は確認された. しかし, 封止法に問題のあることが判明した. 現在再試作中である. 4.励起用レーザの不調・故障・修理のため時間を要し, 実験を試みる迄には至っていないが, コリニアな位相整合を実現するための光学系および差周波数光(出力光)検出系の設計・部品の取得は完了している. 5.パラメトリック周波数変換において効率の制限要因となる可能性のある2光子共鳴吸収について理論的に検討し, その程度を推測可能となった. 以上をまとめると, 理論的検討はほぼ完了した. また, 実験条件やセシウム蒸気用容器再試作のための方針も設定できた. 更に, 励起用レーザは現在修理中であるので, 程なく実験データが得られるものと期待される. 従って残された課題は, セシウム蒸気用容器の実用テストを含めて, 実際に可視光への変換を試みることである.
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