研究概要 |
本研究は, 直線集束ビーム超音波顕微鏡による新しい薄膜音響特性測定法の確立を目指して行ったもので, 前年度の基礎研究結果を踏まえて, 本年度はより異方性の強い一般的層状構造に対して本測定方法を理論的・実験的に拡張した. 62年度の研究成果を要約すると以下のようである. 1.層状構造固体試料における漏洩弾性波伝搬特性の理論解析とプログラム開発:異方性を含めた一般的層状構造に対して数値解析を行い, 測定に関与する漏洩波モードとその伝搬特性, すなわち, 超音波周波数及び膜厚による分散特性, 高次モード依存性を明らかにした. 2.実用されているデバイス構造の薄膜の音響特性評価:超音波周波数225MHzの直線集束ビーム超音波顕微鏡を使用して, 以下の実際的層状構造を例にとり薄膜評価の可能性を探った結果, その有用性が明らかとなった. A.誘電体膜(SiO_2, SiN_x)/(100)InP基板構造試料:光デバイスの基板材料として用いられる酸化シリコン(SiO_2)および窒化シリコン(SiN_x)の音響特性は膜の作成手段と作成条件に強く依存することが明確に検出された. B.ZnO圧電膜の音響特性:ガラス基板上に作成されたZnO多結晶膜とサファイア基板上に作成されたZnO単結晶の音響特性の相違, また単結晶ZnOのバルクの音響特性との違いがはじめて明らかになった. C.イオン注入層/(100)Si基板構造:深さ方向に分布をもつ層状構造試料として(100)Siウェーハ半面にAsあるいはPイオンを注入した2種類の試料にシステムを適用した結果, イオンの種類, イオンの注入量に依存した音響特性の変化が測定された.
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