研究概要 |
近年の急速なロボットの普及に伴い, それに要求される性能も年々高まってきている. 即ち, より高速でより精確な制御性能への要求である. 従来の剛体アームによって精密な位置決めを達成するには, アームの機械的剛性を向上させることが求められるが, これは重量増加を招きやすい. 一方, 高速化のためにはアームは軽量であることが望ましく, これは剛性の低下を招く. これらのことから, アーム自体を剛体ではなく弾性体として扱う制御方式を開発し, その振動を動的に抑制することが重要であり, 従来のロボットアームにはない, 高度の制御方式が要請される. 本研究は, 以上の観点から弾性アームの高速な運動制御系の実現を目指すものである. 高速運動時では, アームの作業状況(可搬物の有無等)によって動特性は大きく変わるから, 常にアームの状態を観測しながら最適な制御を行う必要がある. 可搬負荷の変動に対して, 動特性を一定に保つ適応制御系を構成する事を本研究の中心課題とする. このとき, 本来は分布定数系として扱う必要がある弾性アームを, 有限次元の制御系を構成するために, 自己回帰モデルと無駄時間で近似する. 更に, 先端の位置決め精度の向上を考えて, 先端変位をCCDカメラを用いて直接フィードバックする手法を提案する. 制御手法としては, 非最小位相系が対象になるので, 極のみを配置する適応極配置型の制御系を構成する. この様にして導出された「視覚情報を導入した弾性アームの適応的高速運動制御系」を, 実際に長さ1m程度のアームを制作しリアルタイムの制御システムを構成し実現した. 実験による検証では, 所期の目的が満足され, 可搬負荷の有無に関わらずオーバーシュトのない高速位置決めが実現できた. また, ロバスト性の観点から, 制御サンプリングの周期と無駄時間との関係を求めることができた.
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