研究概要 |
本研究は, 現代制御理論の成果の一つである, 状態変数オブザーバ(具体的には磁束オブザーバ)をACサーボシステムに適用することによって, 同制御システムの飛躍的な高性能化を達成しようとする制御理論的研究である. まず, 連続時間系における誘導電動機の線形状態方程式を導き, この状態方程式にもとづいてGopinath形最小次元オブザーバの手法による2次磁束オブザーバを構成した. 次に, 磁束オブザーバの構成法の一般化を行い, 10種類に及ぶオブザーバの構成が可能であり, それらは, 4つのグループに分類できること等を示した. これらの理論はシミュレーションによってその有効性を確認している. これらの理論的成果を実機実験によって確認するのも本研究の目的の一つである. 誘導機と直流機を用いたMGセットを用い, パワートランジスタPWMインバータとマイクロプロセッサ上に実現した離散時間表現の磁束オブザーバによって2次磁束の推定実験を行い, 収束速度や推定誤差などにおいて, 満足できる結果を得ている. また, 将来のアドヴァンスト制御を行うための1サンプル遅れの補償法を開発した. 付随実験として, 真の磁束値をえるための2次電流を併用した磁束測定法や直流機を用いた慣性シミュレータの開発も行った. さらに, 電動機定数変動に対する磁束推定値のロバスト化に関する展開を行い, 低感度化の指標として構造誤差評価指標を提案した. また, 磁束オブザーバを用いた諸種のベクトル制御系における定常トルクの誤差特性を検討し, 磁束オブザーバによって得られる磁束位相情報をフィードバックする方式が有効であることを明らかにした. なお当研究において開発したシステムでは, 演算速度が著しく不足することも明らかになったので, 現在は, 演算の高速化を目的として, DSPを用いた新しい制御システムの製作を手掛けている. また, 別途開発している加速度制御サーボ系の設計法との融合を図るなど, 将来の研究にもつながっている.
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