研究概要 |
^<137>Csγ線源と高純度Ge半導体検出器を用いるエネルギー分散形蛍光KX線法による高原子番号元素の濃度計測に関する研究を行った. ^<137>Csγ線源は長寿命で安価な線源であり, そのγ線エネルギー(662KeV)が高いため, 容器, あるいはパイプ中の高Z元素試料をそのままの状態で測定できる. しかし, KX線励起効率が低く, コンプトン散乱線が多いなどの問題がある. 試料からの高Z元素KX線検出の際のS/N比を改善し, 濃度測定の精度を向上させるために, 装置の幾何学的条件の最適化を試みた. 第1に, コンプトン散乱は前方散乱の確率が高いことから, γ線源-試料-X線検出器の3者を散乱角が大きくなるように配置した. 第2に, KX線と散乱線に対する試料の減衰係数の相異から, 試料が極端に厚い場合, あるいは薄い場合にはS/N比が低下するため, 容器は適度の試料厚さのものを使用した. いくつかの液体, 又は固体試料について, 高Z元素の濃度計測を行った結果, 検量線としての高Z元素濃度-KX線計数値特性の試料状態による変化が大きいため, KX線とコンプトン散乱線の計数比をとる方法を適用した. すなわち, 高Z元素濃度-KX線/コンプトン散乱線計数比特性を用い, 試料状態依存性を低減させた. 測定精度の点からすれば, 試料状態があまり変化しないオフライン計測ではKX線計数値に基づき, 一方, 試料状態が時間的に変化するようなオンライン計測では上述の計数比に基づく検量線を用いるのが適当である. W, Au, Pb, あるいはU含有量が数wt%以上の水溶液, 粉末, あるいは合金の各試料について, KX線数値に基づく検量線により, 300秒計測によって相対精度(1の)3%以下の濃度計測ができる.
|