研究概要 |
犠牲陽極を用いた電気防食法は, 塗装の保守管理が困難である海洋構造物にとって不可欠な防食法であるが, 犠牲陽極の配置は経験的に決められており, 必ずしも合理的とは言えない. そこで本研究では, 海象に応じた分極特性および海水の比抵抗を与えて, 構造物の形状に応じたその表面の電気防食下における電位分布を, 電流の保存則を組込んだ有限要素法によって解析し, その結果を基に, 最適な防食設計が出来るようにした. 得られた成果を要約すると次のようになる. 1.上記の有限要素計算法を無限に広がる海洋に設置された構造物にも適用できるように, 無限遠点における電位が零に漸近するような内押関数をもつ無限要素を導入した3次元有限要素解析プログラムを開発した. 2.この電位分布解析プログラムを用いて, 複雑な海象下で電気防食が施された港湾構造物の電位分布を解析し, その結果を実測値と比較した. 海水中および海土中における鋼材の分極特性は経年変化を起こしていること, 海面近傍では潮の干満により, 経年変化が起こり難いこと等を考慮した電位分布の計算結果は, 実測値とほぼ一致したことから, 本計算法が実構造物の防食設計に適用可能であることを確かめた. 3.分極特性の経年変化は, その表面抵抗Rsによって評価できる. すなわち防食開始時のRsは1〜2Ω・m^2であるが, 数日後には3Ω・m^2, 一週後に6Ω・m^2, に達し, その後は漸減することが知られている. 防食設計においては, 経年変化のいずれの段階における分極特性を用いるべきかを本計算結果と実測値から検討した結果, Rsが6Ω・m^2の分極特性を用いれば, 過不足のない防食設計が行えることが確認できた.
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