研究概要 |
本研究は, 米国で溶存物質の河川輸送の研究に永く従事して来た研究代表者の創始した二次元流管モデルを本邦河川に活用する意図のもとに始められた. 移流拡散の実測実験の設備や機器の殆んどない環境で研究が始められた事もあり, 現地実測や水路実験については発表に値する成果を現在まで得ていないが, 北米や欧州での最新の理論や実験結果を再検討し, 流管モデルの本質的な理論構成及び実用上の特徴を整理し, 保存性及び非保存性溶存物質への適用の再評価をなし得た事が主な成果であり, 脱稿した二論文は土木学会論文集その他に発表の予定である. 本研究で得られた主要な結論を列記すれば次の通りである. 1.流管モデルは自然河川における非定常濃度分布の記述に最適である. 2.不等流での横分散係数の予測にはテーラーの分散理論を更に拡張するアプローチが必要である. 3.実測によれば巨大河川の横分散係数は, 中小河川や実験水路の夫と余り変らない無次元定数で与えられる. 4.本邦河川のように直線を多用する河道では主流域と停滞域を設定し, 二つの輸送式を連立させて解く方法が必要である. 5.非保存性溶存物質濃度は, 一次減衰を仮定すれば保存性溶存物質濃度の補正として二次元的に記述できる. 6.巾30cm, 長さ12mの直線水路河床に巾10cm, 深さ5cmの停滞域を設けた実験は, 水路調整が不充分の為当初の目的を達し得なかった. 7.巾1.8m, 長さ20mの直線複断面水路の実験については, 抵抗則の知見は得られたものの移流拡散の成果は得られなかった. 8.実河川の実測は実施不可能であり, 現存するデータで採用に値するものはなかった. 尚項目4, 6, 7, 8に関しては, 補助金総額の80%を費し設備機器を備えたので, 昭和63年度以降研究を継続し成果を発表する予定である.
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