研究概要 |
病院は, 清潔環境を厳格に保持すべきところであることはだれもが周知するところである. しかし, 実際においては, その厳格さにおいて不十分さを露呈し, 不足の結果, つまり院内感染を招くことがある. 病院における清潔環境の対象は, 人間をはじめ医療機器や材料など, 院内空間とそこに存する全てを含むものであるが, ここでは清潔環境の構成要素の一つである空気環境に焦点を絞り, 総合病院の外来診療棟, 中央診療棟, 一般病棟などを対象に, 総合的に測定調査をおこなった結果, その実態と院内の清潔特性について, 知見を得ることができた. そのうちの主たる項目を挙げるとつぎのとおりである. 1.微小粒子の濃度変動は, 扉の開閉に伴う室外すなわち廊下の空気の侵入による影響が大である. 5.0μm以上の大粒子の濃度変動は, ひとの挙動による再発じんを含む影響が大である. 2.廊下の空気の侵入による影響は, 侵入空気の汚染度および室内圧に左右される. とくに扉開放状態での手術はその影響が著しいこと明白である. 3.手術室内の微粒子空気の制御は, 空調方式によることが大であり, その選択と施工の技術が清浄度の維持管理を大きく左右する. 4.手術室は, 建築的および設備システムによって, 浄化特性が制約され, そためその空間特有の空気質となり, 清浄特性が形成される傾向にある. 5.また, その空気特性を踏まえた手術室利用法を確立することが, 手術の最善につながるものと考えられる. したがって, 空気特性を把握するための測定法の確立が緊急の課題である. 今回の測定によって, その足がかりがつかめたので, さらに検討を加えた所存である. 6.電気メスの使用による微粒子濃度への影響が大きく, 汚染との関連, また, 測定法の確立に関し, その特性を解明する必要がある.
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