研究概要 |
荷重下にある岩石内のクラックの発生・集積状況をリアル・タイムで可視化観察し, 巨視的破壊にいたるメカニズムを明らかにすることは, 地震や山はねの予知や対策あるいは, 岩石構造物の安定評価のために, 岩石力学では重要な研究課題となっている. 本研究は一軸圧縮荷重下の円柱形試料の荷重軸に垂直な断面内におけるマイクロクラックの集積状況を弾性波CTによって伝播速度分布の変化から画像化して観察する方法を開発し, 試料内で生じる時間的空間的なダイラタンシーの様相を調べて, 岩石の破壊機構の解明に役立てることを目的として行った実験的研究である. まず, 弾性波CTを岩石破壊実験で実現するためのソフトウェアとハードウェアを検討・試作し, 岩石内の断層形成に先立って生じるダイラタンシーの局所化のプロセスが十分観測しうることを見出した. しかし, 岩石に存在する速度異方性が正確な画像化に障害を起すことから, 速度異方性の影響を消去する方法を検討し, 有効な弾性波CT法を確立した. また, 自然条件では避けることのできない含水の影響を調べるため, 乾燥した岩石試料に水を浸潤させ, その進展の様相を画像化観察することに成功した. また, 弾性波CTにP波のみならずS波をRadiationとして使用することにより, 岩石や岩盤の破壊実験への有効性・応用性が増すことがわかった. このような洗練された弾性波CTを岩石試料に発生する断層の形成プロセスの観測に使用し, 非常にゆっくりとした荷重速度のもとではあるが, その破壊面形成過程のリアル・タイム観察に成功した. すなわち, 広範なダイラタンシーが試料の周縁部に形成され, 砂時計のウエストがくびれてゆき, 局所化した領域の中に断層の核となるマイクロクラックの集中が形成され, これらがつながり合って巨視的破壊に至ることがわかった. これらの現象は試料表面での種々の測定によっても確認された.
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