研究概要 |
研究対象地域として九州中部地域にある九重硫黄山及びその周辺地域を選んだ. 野外における調査として, 主として微小地震観測及びMT観測を実施した. また, 上記の野外調査結果及びこれまでに得られている熱学的データを基とし, 熱過程モデルを作成すると共に, 熱エネルギー抽出の可能性を検討した. 微小地震観測の結果, 九重硫黄山噴気地域直下の深さ0〜1.5Kmに地震の多発するゾーンが明らかにされた. このゾーンは同時に, 低地震波速度・低ポアゾン化を示すことも明らかにされた. この地震多発ゾーンの直上に活発な噴気活動が存在していることから, このゾーンは高温噴気上昇通路になっていることが推定された. MT観測の結果, 九重硫黄山を含む幅約500mの東西方向の低比抵抗帯(10Ωm以下)が検出された. この低比抵抗帯下には熱水の存在が推定される. 低比抵抗帯中の九重硫黄山噴気地域直下では相対的にやヽ高い比抵抗を示しており, 噴気地帯地下には熱水だけでなく, 蒸気も存在することが推定された. 以上の結果及びすでに得られている地球化学的研究も参考とし, 地下深部からは高エンタルピーの火山ガスが上昇し, これが地表水とも混合し, 地震多発ゾーンで示される高透水性層を通って地表に達するというモデルに基いてシミュレーションを実施した. 熱学的データを満たす最適モデルは, 地震多発ゾーンでは200°Cを越える気液2相であることが示された. このモデルを用いて, 電気出力10MWに相当する蒸気の生産過程をシミュレートした. その結果, 地表への噴気活動に大きな影響を与えることなく, 10年以上の発電が可能であることが明らかにされた. すなわち, 活火山の活動的な噴気地域における発電の可能性が明らかにされた. 火山エネルギー利用とくに発電の可能性が明らかにされたので, 更に実用化を目指した研究を計画している(昭和63年度科学研究費特別推進研究として申請中)
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