研究概要 |
研究成果は以下の通りである. (1)陽電子消滅2次元角相関測定装置の拡充:128個のBGOと超小型光電子増倍管等により, 世界最大級の256検出器システムに拡充することに成功し, 以下の研究を迅速に行うことができた. (2)純アルミニウムおよびアルミニウム基希薄合金の熱平衡欠陥近傍の電子運動量分布:アルミニウムの陽電子消滅ドップラー拡がりの温度依存性は, 熱平衡に存在する原子空孔によるものであるが, これに微量不純物元素を添加すると融点近傍で異常な尖鋭化を示すことを発見した. この現象は陽電子寿命測定では現われない. 2次元角相関測定により, 中間温度領域での自己相関関数は原子空孔の効果により説明できるが, 融点近傍のそれはポジトロニウムによることが判り, 新しいトラッピングモデルの提案を行った. (3)酸化物高温超伝導体のフェルミ面の決定:酸化物高温超伝導体の欠損酸素の効果を見る目的で、La_2CuO_4の2次元角相関測定を行ったが、酸素原子空孔によるトラッピングは全く起らず、逆にこの事実からフェルミ面を決定することができた。 決定されたフェルミ面は完全な2次元性を示し、バンド的には金属であることが判った。 (4)純鉛および鉛基希薄合金の原子励起子の存在の直接的実証:鉛中の原子半径の小さな不純物元素は, 非常な高速で拡散することが知られ, 原子励起子のモデルが提案されている. 高温での2次元角相関測定および自己相関関数の解析により, 原子励起子に相当する成分を直接検証することができた. (5)電子線照射したニッケル中の原子空孔の周囲の電子運動量分布と水素添加の効果:ダイナミトロン加速器により, 低温で電子線照射したニッケルの2次元角相関測定を行い, 導入された原子空孔近傍の電子運動量分布を決定した. また, これに及ぼす水素添加の効果を測定し, 原子空孔と水素の相互作用および水素の存在位置を決定した.
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