研究概要 |
従来とは次元の異なる設計思想に基づいて開発された, 半導体を主とするヘテロ接合材料の界面構造解析を, 高分解電顕格子像によって, 行う事を目的とした本研究は, 当初の予定を上回って進展した. 半導体ヘテロ接合は, 通常型と歪超格子とに大別されるが, それぞれについて多種類の高分解能電顕格子像解析を行い, 何れも成功をおさめた. その中で特筆しておきたいのは, ヘテロ接合の本流とも言うべき, GaAs-AlAsを中心とする, 通常型ヘテロ接合の界面観察の成功である. この型のヘテロ接合は, 原子の幾何学的配列が, 全く連続であるために, これ迄, 格子像法では観察が不可能であり, 新らたな原理に基づく観察法の開発が, 切望されて来たが, 本研究が世界にさきがけて, これに成功した. 電顕格子像を形成している試料内の回折波の強度分布が, 結晶内の原子の種類に依存している事に着目し, これを制御している結晶構造因子の見直しを行った結果, 本来原子の種類に関する情報を, 自身ではもっていない弾性散乱波によって, 結晶構造は全く等しいが, 原子の構成が一部違っている物質を, 別々の格子像パターンで観察する事に成功したものである. これにより, ヘテロ界面における一原子高さのステップが存在する事も確認された. この手法は今後この分野における基本的観察法として, そのままあるいは応用的に世界中で多用されるものと自負している. 京都における国際電顕学会で先駆者であるペトロフ教授と共にシンポジュームの座長に指命された事, , ヘテロデバイスの理論的創始者である江崎玲於奈博士の監修する著書の執筆者の一人に指名された事等が本研究のレベルを示す一例である. 研究の成果は25編の論文として発表され, 口頭発表は国際会議を含めて, 26回以上行っている. なお, 本研究は, 先発の米国を追いかける形ではじまったが, 今や完全に追いこしてしまった.
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