研究概要 |
溶接継手はその形状的な不連続による応力集中により, その疲れ強さは平滑材に比べて低く, 特に高張力鋼溶接継手でその傾向は著しい. また, この応力集中軽減のためにグラインダによる余盛の研削, TIG溶接法による溶接ビード止端部の溶融処理などが実施されている. しかしこれらの方法は工程を二度に分けなければならず, TIG溶接による処理では残留応力の増大, アンダカット, ハンビングなどの不整ビードの欠陥を生じやすいことも知られている. 本研究では比較的小入熱でも滑らかな余盛形状を与えることのできるパルスTIG溶接法を用い, 止端処理し溶接継手の疲れ強さを改善しようとするものである. この場合, パルスのバラメータは多く, 合理的に条件を求めるのは困難がある. 本研究では継手に滑らかな形状を与える溶接バラメータの算出を表面張力理論に基づき行った. この結果, 計算と実験は95%以内の精度で一致した. ビードのパルス溶融処理は比較的高周波のほうがアークの安定性も良く不整ビードの発生も防止できることが明かとなった. またビード処理に関する実験は現在も継続中であるが, その結果を要約すると以下のようになる. パルスTIG溶接法によるビード止端処理により溶接継手の疲れ強さは母材の70-80%まで向上する. この場合疲れ強さは止端部の応力集中係数のみに依存し, 組織的には影響を受けない. しかしながらデータがやや不足しているので, さらに実験を継続中である. また, 選定した条件はやや入熱が過大で溶接継手の後処理後の角変形も認められるのでさらに小入熱域でアーク安定性を確保できるよう1Kz程度の高周波パルスTIG溶融処理の検討を加える必要がある.
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