研究概要 |
本研究は急激な材質変化を軽減した高性能セラミックス溶射皮膜部材の創製を目的としたもので, 溶射皮膜中におけるセラミックスの混合割合を金属素材面より皮膜表面へ連続的に増加させ最表面をセラミックスとする, いわゆるサーメット系漸変溶射皮膜創製のための適正材料の組合せ, 溶射方法及び施工条件, さらに溶射後の皮膜の強化処理法について種々検討した. この目的達成に対し, 主として(1)実用性能を評価するための摩耗試験機の試作及び評価法の確立, (2)溶射皮膜の熱衝撃性に及ぼす皮膜積層形態の影響, (3)溶射後の強化処理条件の3項目について研究を行った. 本研究の結果得られた主な成果を要約すると以下のようである. (1)溶射皮膜の土砂摩耗特性を評価するために摩耗減量曲線の勾配で定義した比摩耗速度を導入した. 定常摩耗域における溶射皮膜材の摩耗特性は, 両対数グラフ上における比摩耗速度線図の比較により評価可能である. (2)減圧条件下での皮膜は, 一般に大気圧下での皮膜よりも, 平均気孔率, 貫通気孔率, 硬度等の点で優れた性質を示す. しかし一定入力溶射条件下では特にセラミックス材料の場合, 減圧度を上げることは必ずしも皮膜作成において有効であるとは言えない. (3)溶射皮膜に対する適切なる強化熱処理は, 皮膜/素材間の結合強度を向上させるとともに, 皮膜のち密化をもたらす点で極めて効果的である. (4)耐熱衝撃性に対する漸変溶射皮膜積層形態として, 素材/金属下地層/漸変層/表面セラミックス層が優れていることを実験的に明らかにした. 通常の二層皮膜においても, 二層間に漸変部を設けることにより, 有効的に耐熱衝撃性の向上を図ることが可能である. これらの成果は, サーメット系漸変部溶射皮膜実用化に対し有益なる指針を与えるものと確信する.
|