研究概要 |
本研究で得られた主要な研究成果を要約すると以下のごとくになる. (1)パルスYAGレーザ照射時にターゲット表面より発生する高輝度発光体(プルーム)はプラズマではなく, ターゲット材料の高密度・低温の原子状水蒸気が発光していること, また発光はレーザ照射開始直後の極く短い期間のみで, 大半の時間非励起状態であることが分光学的に確認された. 非励起状態となる原因は蒸発原子が空間で凝縮して超微粒子を形成するためである. (2)プルームの流体構造を超時間分離能を有するシャドウグラフおよびシュリーレン写真法を用いて解明した. 照射パワー密度が中程度の場合, プルームは中心部に蒸発蒸気流で形成されるコア部と外周部に圧縮された雰囲気ガスよりなるシース層の二重構造を呈する層流高速ジェットである. 一方, 照射パワー密度が大きくプルームとスパッタが発生する条件では, プルームは完全な乱流で二重構造は見られない. またスパッターはブルーム発生後暫くの遅れ時間の後に照射溶融部から細い糸状の液柱が上方に飛び出し, これが小さな粒子になって飛散る現象であることが判明した. (3)パルスYAGレーザ照射部の時間的溶融加工過程はプルーム発生現象と密接な関係にあることが判明した. 層流プルームが発生する条件では, レーザ照射中溶融池表面の凹みは少なく溶け込みはほぼ熱伝導で決まる. 一方, 乱流ブルームが発生する場合, 液面はプルーム圧力により排除されてスパッタとして排出され, 固体界面にレーザが直接照射されるため急速に深く溶け穴開き状態となる. これらの代表的な加工現象について二つの熱伝導モデルを設定し解析した結果, 実験値とは良い一致を示した.
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