研究概要 |
1)ポリーγ-ベンジルーL-グルタメートを合成し, その側鎖に金属フタロシアニン(Mt-Pc)を結合させた. 導入された金属はFe(III), Co(II), Ni(II)またはCu(II)で, 担持率は0.2〜2.8モル%である. ポリマーは個体およびヘリックス溶媒中でα-ヘリックスを形成し, Fe(III)以外のMt-Pcはダイマーを存在する. Mt-Pcを担持する主鎖セグメントは不規則コイル状で, 僅かな担持率が大幅にヘリックス含有率を低下させる. ポリマーのジオキサン濃度溶液はコレステリック液晶を形成し, そのピッチは, Mt-Pc含量とともに増加する. Mt-Pcは液晶構造から排除される. ジブロメインを形成し, このドメインは21キロガウスの静磁場内では再配向せず, Mt-Pcダイマーを介したドメインの架橋構造の形成が窺える. Fe(III)-Pcポリマーは14キロガウスの静磁場内でドメインを形成して配向する. 液晶溶液からキャスト法によって作製した皮膜内で, 主鎖α-ヘリックス・セグメントMt-Pc環とは共に皮膜面に平行に配列する. 2)ポリーL-リシン・HCl塩についても同様な誘導体を合成した. ポリマーはDMSO, および水に可溶で, 水溶液中ではpH9.8付近で急激な「コイル→ヘリックス転移」を起こし, 同時にMt-Pcはダイマーから一部モノマーに転ずる. ポリマーは中性水溶液中にあっても高濃度のとき溶媒の熱力学的活性低下のため同様の転移を起こし, 棒状ポリマーの回転阻害のため直ちに液晶を形成する. 液晶溶液から作製した皮膜に関しては, 先きに見られたような面内配向は観察されない. これはポリマーの乱雑な凝集によるものと考えられ, 実際濃厚水溶液中でポリマーの磁場内配向は起こりにくい. 3)両ポリマーとも充分な量の均質皮膜が得られず, その物性に関して満足すべき測定は今後の課題として残された.
|