研究概要 |
1.成果:(1)61年度に調査できなかった北海道内の漁業協同組合を対象とし, 2,460件の労働災害事例を収集した. このうち, 漁業機械に関わる事例は957件で, 過年度に収集したものとあわせて分析をした結果, 流・刺網漁業に多くの災害事例を見たが, 北海道の経営体階層別経営体数比では沖合・遠洋底曳網漁業が最も高い値を示していた. 小型機船底曳網漁業における災害要因を分析した結果, 災害に関与した漁業機械はドラム・ホーラ類, デリックが多く, 要因としては桁網などの漁具が身体に当る事例が最も多くを占めていた. (2)実際操業における作業分析のモデルとして, ウバガイ桁曳網漁業を取り上げ, 測定を行った. 噴射式桁曳網と従来式桁曳網の最大張力は夫々約250kg, 2tであり, 後者の場合, 身体の一部, 着衣がドラムに絡むと重大事故に至ることが分かった. また, 機械の始動, 停止スイッチが緊急事態発生時に, ただちに停止できる位置に必ずしも設置されていないことや巻取網にワイヤロープを用いる従来型では, ロープ巻き揚げ時にドラムの近傍で, 腐食と素線間の摩擦を減少させ摩耗を防ぐグリース塗布という危険作業があり, また, 素線の切断が危険を増大させていることを明らかにした. (3)漁船騒音の測定を61年度に引き続き行い, 作業者の音声を騒音から識別するためのバンドパスフィルタを製作し, 分析した結果, ドラム近傍で約80dB(F)以上の音声入力があれば識別できるが, 無線音の対処が音声識別上の重要な課題であることが分かった. (4)これらの結果を集約し, 研究成果報告書を作成した. 2.今後の研究の展開:(1)今回は小型機船底曳網漁業のみについて労働災害要因分析を行ったが, 全漁業種類について分析を行う. (2)本研究の測定例と異なった桁曳網漁業の測定を試み, 危険域の決定, 危険要因などの分析を積み重ねる. (3)安全対策として考えられる機構を増し, その実現のため, 室内実験などで基礎資料を得る.
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