研究概要 |
1.数年前から開発研究を進めてきている長短期流出両用モデルについて検討を重ね, 結論に近いモデル(LST-II型)が得られたと判断した. そこでこれを永源寺ダム・大迫ダム流域に適用し, その有用性を確かめた. 2.山奥のダム流域では平均降水量の推定が問題であるが, 大迫ダム・永源寺ダム流域を事例研究流域としてこの問題に検討を加え, 標高別地帯分割法が積雪期をも含めて良結果の得られることを検証した. 3.永源寺ダム流域では雨量観測網が現状に再整備された1981, 1982年, 大迫ダム流域では観測開始直接の1974, 1975年の, いずざも2年間の資料により長短期流出両用モデルを同定した後, それぞれ1974, 1976年以降, 1987年9月までのデータで検証計算を行い, いずれも11年以上の検証期間を経た今日でも, なお十分な精度で, 流量予測に役立てられることを実証した. 4.彦根では最近62年間の2日雨量100mm以上の59降雨, 大迫ダム地点では最近の33出水時の大台ヶ原の24時間最大雨量を対象に, 降雨波形特性を吟味していくつかの興味ある事実を明らかにした. これらの成果を利用して, いくつかの波形の降雨を長短期流出両用モデルに入力し, 任意時間後のダム流入量を確率表示することの可能性を吟味し, 有用な結果を得た. 5.洪水のオンライン予測の精度を向上させるため, 長短期流出両用モデルにカルマンフィルターを利用する二, 三の手法を検討した. その結果, 最上層水深のみを状態変量とする直接法が, 簡便かつ精度もよく, 実用的であることを, 大迫ダムおよび永源寺ダム流域の資料を用いて検証できた. 6.精度に問題のある水位流量曲線を, 長短期流出両用モデルを利用して補正することを試み, その有用性を実証した.
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